アニモ出版
売り上げランキング: 551,854
著者の榎本博明氏は、東京大学教育心理学科卒業して一般企業に勤務された後、心理学の博士号を取得されメンタルマネジメントをベースにした研修や講演を行っていらっしゃる方です。
私、脱サラして教員なんて職に就きましたが、決してしゃべりが巧みな方ではなく、常々口下手を解消したいと考えている次第。少しでも対話を改善できるよう、重要なポイントをいくつか押さえておきたい……というのが、本書を手にした動機です。
さて、中身について。
タイトルに「テクニック」とありますが、テクニック偏重ではありません。
冒頭に「本書の特徴は、ただ対話上手のスキルを並べ立てる類書と違って、その背景にある心理メカニズムを解き明かしているところにあります」とあるとおり、うわべだけのノウハウ本だと思ったら大間違い。テクニックの土台となる心理学の内容をまじえながら解説をしてくれるため、スキルのもつ意味がすんなりと納得できるのです。
著者の主張は次の3点に集約されます。
- テクニックに走らず、内側から自分改造をすることが必要
- その上で、伝えたいことを気持ちを込めて話す
- 人に関心を持ち、相手の話にじっくり耳を傾ける
とはいえ、3章と4章では具体的なテクニックも紹介されています。ざっと列挙すると……
- 共通点を探して強調する
- 驚きや賞賛の気持ちを素直に伝える
- 自慢話をしない
- 相手と自分をシンクロさせる
- 適切に自己開示する
- 説得するときは対話調で
- 指示するときは相談調で
- 注意するときは質問調で
- 反論は共感しつつ疑問形で
等々……。
今、自分が学んでいるコーチング・セッションの際に押さえておくべきことが再確認できました。例えば、「対話の場をリードしているのは話し手ではなく聴き手である」とか「相手の話に興味をもてない場合、話の中身ではなく相手という人間自体に関心をもつように努める」。いずれもコーチングの考え方が色濃く反映されています。
また巻末の自己診断で、自分のコミュニケーション特性も把握できました。傾聴力と他者理解力が高く、社交力と自己開示力が低いとのこと。予想どおりですね。
いずれにせよ、読者は本書で紹介されていることを実践していく過程で、他人との会話に尻込みしたり臆したりすることが少なくなるでしょう。対話を苦手と感じている方はご一読あれ。
最後に、「会話」ではなく「対話」という言葉を使っているのはどういう理由なのか、残念ながら言及はありませんでした。
最近のコメント