「教育実習を受講することなく実習免許状を取得する方法」、法律的には問題ないのですが、現実問題として授与されるものなのでしょうか。

管理人が確認している事例としては、農業短大の講師が高校農業実習の免許を取得したというケースがあります。

前回の記事で紹介したように、授与されるか否かは教育委員会の判断次第なのですが、その際のポイントとして挙げられるのは次の4点。

  1. 免許状取得の目的が明確で説得力があるか。
  2. 学校現場のニーズに合致しているか。
  3. 教員としての資質・能力に問題はないか。
  4. その専門分野について経験豊富で技術優秀か。

以下、若干の解説を……。

1.免許状取得の目的が明確で説得力があるか。

どの都道府県でも「○○実習」での採用は、まずありません。管理人の現勤務校所在地域では情報系の臨採または非常勤講師のニーズは高いので、「実習免許のみで学校現場に入りたい」というケースにも対応できそうなのですが、実習免許状の取得を目指す人の目的は、ほとんどの場合「別表第四によって他教科教員免許を取得したい」というものでしょう。

この“他教科”というのが曲者で、たとえば、目的は「国語」の免許状取得ですが、教育実習を回避するために基礎免許として「情報実習」を取得するというケース。「情報実習」の免許は踏み台としての利用価値しか認められないので、これはいかがなものかと。教育委員会としては、踏み台にするための免許状を濫発するわけにはいきませんからね。

別表第四の適用に説得力をもたせようとすると、関連教科・科目で攻めるしかないでしょう。「情報実習」の免許を基礎として、教科「情報」の免許を取得するというように。

実際に 教育委員会とのやり取りで、

教委「なぜ実習免許を取得したいのか」
申請者「別表第四で地歴の教員免許を取得するため」
教委「なぜ別表第一で取得しないのか」
申請者「現職に就いたままでの教育実習は難しく、逆に教育実習のために退職するのもリスクが高い」
教委「免許を取得し、採用試験に合格したら、退職できるのか」
申請者「できる」
教委「そうであれば、別表第一にしたがって教育実習に行くべき」

というような、堂々巡りというか噛み合わない議論になってしまったというケースもあるようです。

2.学校現場のニーズに合致しているか。

くり返しますが、現勤務校周辺のように、情報系教員のニーズがあれば「情報実習」の免許で大歓迎です。

3.教員としての資質・能力に問題はないか。

教員の不祥事が後を絶たない昨今、これは問われますね。教育委員会とのやり取りの中で、あまり突飛な言動は考えものです。

4.その専門分野について経験豊富で技術優秀か。

某県教委に問い合わせたところ、大学での専攻と職種がダイレクトに結びついていること、あるいは延長線上にあることが前提、との回答をいただきました。加えて、優秀な人材でなければ、わざわざ一般社会人からの転職者に免許を与えて教員として教壇に立ってもらう意味がありません。

経験や優秀さを証明(?)する具体的な方法としては、現在の勤務先から在職証明書や上司の推薦書的なものを入手し、提出する必要があると思いますが、果たして現在の職場がそういうものを快く発行してくれるかどうか、疑問は残ります。

以上、長々と紹介してきましたが、最後に「○○実習」の免許状授与が認められない場合として、次の二つのケースをあげておきます。

  • たとえば「商業」あるいは「情報」の免許を持っていて、ぞれぞれ「商業実習」「情報実習」の取得を目指す場合……授業できる内容が重なるため。
  • 学校現場にメリットがない場合……現場での職につける可能性が低いため。逆に言えば、現場にニーズやメリットがある場合は、実務で培った経験が大いに活かされますので、幅広い知見を持った民間出身者は大いに重宝されることでしょう。