学校で教壇に立つためには、基本的には教員免許(教育職員免許状)が必要です。
教育職員免許法 第三条
教育職員は、この法律により授与する各相当の免許状を有する者でなければならない。
一口に教員免許といっても、学歴(基礎資格)や学校の種類、教科などによって細分されており、体系がなかなか複雑でわかりにくいことが難点。そこで、表に整理してみました。
まず、大きく「普通免許状」「特別免許状」「臨時免許状」の3種類に分かれます。
普通免許状
普通免許状は文字どおり最も“一般的”な免許で、教職課程が設置された大学や文部科学大臣が指定する教員養成機関などで所定の教育を受けたのち、都道府県の教育委員会から授与されます。
また、文部科学省やその委嘱を受けた大学が実施する教員資格認定試験に合格するか(管理人はこれでした)、都道府県の教育委員会が実施する教育職員検定に合格することでも授与可能です。
有効範囲は日本国内。どの都道府県教育委員会が発行したものであっても構いません。
有効期間は、2009年4月から導入された教員免許更新制度によって10年間になってしまいました。現職教員は10年に1度、更新講習を受講しないと免許が失効します。厳密に言うと、10年を経過する日の属する年度の末日までが有効期間です。
この普通免許状、さらに専修・一種・二種に細分されます。それが教員免許状の体系を複雑にしているように思うのですが…。
専修
専修免許状は、一種免許状を取得している者(または一種免許状を取得できる要件を備えている者)が大学院で学び、修士の学位と教科又は教職に関する科目24単位を修得した場合に取得できます。つまり、専修免許は一種免許の上位免許になります。
そもそも専修免許って、昭和63年の免許法改正により創設されたもので、狙いは、大学院修士課程修了レベルの資質の高い教員を確保することと、一種免許状を持つ現職教員に専修免許上進への道を開いて研鑽意欲を高めることでした。
しかし、専修免許を取得したことによる処遇面での優遇措置は基本的にないことや、その位置づけの曖昧さから、現職教員の専修免許保有率は最も高い高等学校でさえ25%(2004年)にとどまっています。
このようなことから、専修免許を取得するメリットは皆無かというと、これがそうとも言い切れないから難しい。
学校教育法施行規則の第二十条に「校長の資格は、次のいずれかに該当するものとする」として、「専修免許状または一種免許状(高等学校及び中等教育学校の校長の場合は専修免許状)を有し、かつ、教育に関する職」に5年以上就いていたこと」とあります。つまり法律上は、高等学校の校長になるには専修免許が必要なんですね。
ところが実際は、附則や他の条項によって、専修免許状を持っていなくても管理職に登用される場合もあるなど、実質的な効力がありません。
ただ、首都圏・関西圏の私学中高では、募集の前提条件として「専修免許所有」とするところが少なくないので、まあ、そのあたりが専修免許のメリットでしょうか。
一種
教員免許といえば、一般的には一種を指します。
一種免許状を取得する方法はいろいろありますが、通常は四年制大学で教職課程を履修し、必要単位を修めればOK。要するに、大卒で教員免許を取得したら、一種になるということです。
以前は、高等学校教員資格認定試験に合格すれば当該科目の一種免許状を取得できました(管理人が初めて免許を取得した方法)が、2004年(平成16年)度以降、残念ながらこの試験は休止されています。
特別支援学校教員資格認定試験は2015年(平成27年)現在も継続されているので、これに合格すると、特別支援学校自立活動教諭一種免許状が]取得できます。
その他のいろいろな方法については、また稿を改めて。
二種
短期大学卒業の資格を基礎に取得できる教員免許状が二種です。また、幼稚園・小学校の場合は教員資格認定試験に合格すると、二種免許状を受けることができます。ただし、高等学校の免許状には二種の区分はないので、二種免許状では高等学校の教員になることはできません。
教育職員免許法第9条の5には、二種免許状のみを持つ現職教員に対して、一種免許状に変更するように努める義務を課している(努力規定)ため、二種免許を受けて採用されている場合、将来一種免許状に変更(上進)することを奨励されることが多いようです。
特別免許状
特別免許状は、各分野において特に優れた知識・経験・技能をもつ社会人を、教員として招くために設けられたものです。「特に優れた…」が条件ですから、授与件数は全国で年間数十件程度と、ごくわずか。
授与されるケースとしては、
- 採用試験の社会人特別選考に合格
- 学校(おもに私立)側の募集に対して応募
- 予め採用(学校)側と何らかのつながりがある場合
- 飛び込み営業(売り込み)
3のつながりがある場合というのは、たとえば、従来から運動部の指導に当ってもらっていた外部コーチ(体育)とか、情報セキュリティに関する年1回の特別講義をお願いしていたシステムエンジニア(情報)とか、そういったケースが考えられます。
4は、売り込みのタイミングと学校側のニーズがどんぴしゃりで合致しないといけないので、よほどの幸運に恵まれないとまず無理ですね。
この他の事例については、文部科学省ホームページの「特別免許状の活用事例」を参照してください。
キリスト教系教会の牧師さんが、教科「聖書」の特別免許を交付されて教壇に立つ、というケースもあるんですね。
この特別免許、教育実習の単位は必要ないので、教員を目指す一般社会人の方にとってはありがたい制度ですが、特に優れた知識・経験・技能を求められるので、非常に狭き門を言わざるを得ません。
しかも有効範囲は、発行された各都道府県内のみ。有効期間も10年と限られています。
臨時免許状
臨時免許状は、普通免許状を持つ人を採用することができない場合に限って発行されるものです。
具体的には次のような場合。
ケース1
ある小規模校。1人しかいない数学の教員が突然の事故で長期入院することになった。急遽募集を行ったが、応募はゼロ。やむなく数学を教えることができる理科の教員に数学の臨時免許を発行した。
ケース2
教員を急募したが、応募なし。伝手のある大学に問い合わせたところ、免許取得見込みの学生を紹介されたため、その学生に臨時免許を授与して週5時間の授業を担当してもらった。→ こちらが実例です。「大学4年生、臨時免許で教壇に 福岡の中学、教員不足で」
つまり、学校側の事情がすべてであり、受ける側がほしいといって授与される性質の免許ではありません。
有効範囲は免許を発行された各都道府県内のみ。有効期間は3年ですが、暫定処置として教育委員会規則で6年間とされることもあるそうです。
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