この方法は意外に穴かもしれません。大学等での専攻+実務経験で免許状を取得しようというものです。
根拠規定は「教育職員免許法 別表第五 イ」。
第一欄 受けようとする免許状の種類 | 第二欄 基礎資格 | 第三欄 第二欄に定める各免許状を取得した後、大学において修得することを必要とする最低単位数 |
高等学校において看護実習、家庭実習、情報実習、農業実習、工業実習、商業実習、水産実習、福祉実習又は商船実習を担任する教諭(の一種免許状) | イ 大学において第一欄に掲げる実習に係る実業に関する学科を専攻して、学士の学位を有し、一年以上その学科に関する実地の経験を有し、技術優秀と認められること。 | - |
ロ 第一欄に掲げる実習についての高等学校助教諭の臨時免許状を取得した後、三年以上高等学校において当該実習を担任する教員として良好な成績で勤務した旨の実務証明責任者の証明を有すること。 | 10 |
これは、高度成長期に実業系の教員免許状保持者が民間に流れて教員が不足したために設けられた規定で、現状は有名無実と化していますが、有効です。
この条文の中で、解釈に幅があるというか議論になると思われるのが、「実地の経験」という部分。
複数県の教育委員会に確認したところ、「教育現場での経験に限るものではない」という回答をいただきました。民間企業での業務経験でも問題なく、要は「大学での専攻と職種が一致していること、あるいは延長線上にあること」と認められればよいそうです。
たとえば、
- 情報系の大学を卒業後、SE(システムエンジニア)として5年間、システム開発業務に携わっている人
- 某大学の商学部を卒業後、経理畑で3年間働いてきた人
であれば、それぞれ「情報実習」「商業実習」の免許状授与は十分可能とのことでした。
以前の記事「経理職から教員への転職は…」で、「教育実習を経験せずに商業系の免許を取得する方法は皆無ではありませんが、それこそかなり実現性の薄い話です」と書きましたが、前言撤回。 冒頭でもふれましたが、実習免許状は意外にハードルが低いのかもしれません。
「技術優秀」かどうかについては、現在の勤務先から優秀だという証明書をもらえばOK。退職を視野に入れて日々を過ごしている場合も、できるだけ上司とは良好な関係を保っておきましょう。
すでに何らかの職に就いている一般社会人が、通信教育で大学卒業資格を得ようとしている場合は一つ注意が必要。
学位の資格を有した上で1年以上の実務を経験することが求められているので、すでに実務経験があるからといって、通信で実務と同一分野の学位の資格をとっても、その時点で免許状の授与資格を満たすわけではなく、そこを起点として1年以上の実務経験が必要になるのです。
授与資格を満たしていれば、最短1ヶ月程度で免許状を取得できますが……念のため! 「○○実習」の免許状では文字どおり実習の授業しかできません。座学で教壇に立つことはできないのです。そうなると、採用の道は非常に狭く、せいぜい講師の口にありつければ幸いというのが実情です。
では、実習免許状は無意味かというと、そうは思えません。教員免許状をまったく持たない人が学校で働くための足がかり・突破口としては、きわめて有効です。教職課程を経て免許を取り、採用試験に合格して正規教員というルートが望ましいのは言うまでもありませんが。
学校を取り巻く環境にもよりますが、たとえば「情報実習」の免許状で教育現場にとっかかりを作った後、私のように、校内IT管理という、ほとんどの教員が忌避する仕事を一手に引き受け、そこそこの信頼を獲得してしまえば、かなりの期間、身分の安定を確保できるのではないでしょうか。
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