このたび、自分自身の転職経験をベースに、生きる糧を得るための「武器」について小文をまとめる必要に迫られまして……amazonで検索してこの作品を知りました。

自分の「武器」を見つける技術

自分の「武器」を見つける技術
水王舎 (2016-11-01)
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著者の池田潤氏は京都大学法学部を中退してビジネスを立ち上げた方。肩書は作家・コーチとなっていて、確かに作品の随所にコーチング的発想が見られます。

内容をひと言でいうと、著者の体験をふまえた「訓話」です。一貫して自分特有の武器を活かすことの大切さと、そのために決して自分を卑下せず、卑屈にならず、誇りを持って生きていくことの大切さが説かれています。

就職を控えた学生さんや職に就いて数年という方には、今後の身の振り方を考えるための一助になるでしょう。ただ、社会人経験○十年という方にはやや物足りない内容かも。マインドセットの話が大半で、具体的なテクニックやノウハウの類にはほとんど言及されていません。

私にとってもマインドセットの再確認にはなりましたが、レベルアップという面からすると、残念ながら収穫といえるものはあまりありませんでした。

とはいえ、ところどころに印象的な箇所がありますので、ピックアップします。

ムダな努力に結果は伴わない。そもそも備わっている自分の武器を活かさなければ、結果も出なければ日々の充実感もない。己を知り、正しい方向に努力すれば、結果は必ず出る!(58ページ)

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という、『孫子』のおなじみの一節と重なります。

武器を見つけるために欠かせないこと。それは、卑屈にならないこと。自分を愛すること。自分自身に価値を感じること。自分に「NO」ではなく「YES」を出すこと。この大前提がないと、キミは自分の武器を見つけることができない。見つけたとしても見つからないことにしてしまい、人から見つけてもらっても認めないだろう。卑屈になり、自分を愛せず、自分に価値を感じられないと、武器などそもそもない前提で自分や人生をとらえてしまうからだ。(121ページ)

特にこのあたりに、マインドの面から自分の武器探しを捉える著者の姿勢が強く感じられます。

できない理由がたくさん出てくるのは、最初からできないと決めているからだ。やらない理由がたくさん出てくるのは、最初からやらないと決めているからだ。自分を否定する理由がたくさん出てくるのは、最初から自分には価値がないと決めているからだ。つまり、私たちの人生は、最初に決めた結論の証拠集めなのだ。(198ページ)

アドラー心理学の「目的論」ですね。「やらない」という目的が最初にあって、後から理由づけをするというものです。

ネガティブとポジティブはお互いが必死に協力して、キミが何を望んでいるかを教えてくれている。(206ページ)

何かを望むにも勇気がいるということがわかった。何かを望むということは、今の毎日から一歩踏み出すということだ。しかし、一歩踏み出す勇気がない人は、今の毎日から抜け出せずに済む理由を考え始める。(217ページ)

とりわけ本書の後半にコーチング的発想が色濃く見られます。「一歩踏み出す勇気がない人」というか「勇気がくじかれてしまっている」状態もあるわけで、そこがコーチの出番ですね。

新しい気づきは得られませんでしたが、著者はコーチを名乗られているだけに、コーチング的発想の部分でうなずける箇所が多く、読後感は悪くない。

コーチング的思考に触れたことのない人にとっては新鮮なのではないでしょうか。