北海道で宇宙開発に携わっている植松電機という会社の専務取締役・植松努氏がお書きになった本です。著者の植松氏は、幼少の頃から飛行機やロケットを飛ばすことに興味をお持ちだったそうで、紆余曲折を経て、周囲からは誇大妄想としかみなされなかった夢をかなえられたとのこと。
この本では、一貫して「夢を諦めないことの大切さ」が説かれています。以下、特に惹きつけられた箇所(いくつもあります)を引用。
「夢」という言葉について調べてみたところ、アメリカの辞書には〈夢とは……強く願い、努力すれば実現できるもの〉と書かれていました。ところが、日本の辞書には〈夢とは……はかないもの。叶わないもの〉と書かれていました。
今、世界が真剣に探し求めているのは“やったことがないことを、やりたがる人”です。
日米の思考様式の違いでしょうか。YouTubeなどのおもしろ動画で、アホなことに挑戦する米国人をよく見ますが、こういう考え方をすると見方が変わってきます。
「自分なんて、どうせ無理だから」という言葉が日本中に広がってしまったから、がんばれない人、できることしかしない人、考えない人が、今もどんどん増え続けています。
とたんに大学は学問を探求する場所ではなくなり、「いい会社に入るための資格」になってしまったのです。すると高校は大学に入るための資格に、中学は高校に入るための資格に、気がついたら楽と安定を保証してもらおうと求めた結果、学問は「資格商法」になり、べらぼうなお金を要求するようになり、しかも支払える金額によって格差が生まれるようになりました。
これらの3つの国(※)に共通していることは、「教育費がほとんどタダ」です。しかも、小学生から授業で“会社の起こし方”や“発明の仕方”を教わります。会社は誰でも作れますが、日本のほとんどの学校では、“雇われ方”どころか、“受験の仕方”しか教えてくれません。
※フィンランド、スウェーデン、イスラエル
人生なんて一回しかない。それなのに最短コースを選んだら、一瞬で終わっちゃんじゃないですか。いっぱい寄り道をした方が得だと思いませんか。いっぱい人に出会ったらいいです。いっぱいいろんなことやったらいいです。それこそが棺桶に入る瞬間の、自分の価値になります。
いくつも好きなことがあると、今度は「中途半端だ」と言われることがありますが、気にしなくていいです。中途半端だってなにもしないよりも、なにもできないよりも、断然いいからです。
ぼくたちは知恵と工夫で、世界を救うために生まれてきました。
とにかく、活字を追う端から希望と勇気が湧いてきます。起業にも大いに通じる考え方です。加えて、文体が平易で読みやすい。
現在の学校教育を否定するような記述がありますが、その中に身を置いている者としても納得。生徒たちにもぜひ読んでもらいたい本ですが、“教員が薦める本”というだけで敬遠されそう。
一つ注文をつけるとすると、表紙の作業着姿の植松氏の写真はやめて、イラストにした方がいいと感じました。私だけかもしれませんが、スーツや作業着はどうしても「ビジネス」を想起してしまい、合理的で冷徹な印象を受けるのです。この本のコアコンセプトは「夢」なので、イラスト担当の須山奈津季さんが描くほんわかした感じの絵がいいと思いました。
年齢を問わず、おすすめできる本です。特に自信喪失気味の方には、大逆転の起爆剤になり得るかも。
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