以前の記事「教員の時間外労働はもう要らない」で、教員の残業についてふれましたが、ここでもう少し詳しく……。
公立学校では、教員は基本的に残業できないことになっています。これは、1971年(昭和46年)5月に成立した「公立学校の教員の給与等に関する特別措置法」に基くもので、教員は自主的な残業ができず、したがって残業手当がない代わりに、教職調整額という基本給の4%の手当が月額支給されています。
2008年(平成20年)度をめどに、一般公務員と同じく残業手当を出す動きがありましたが、どうやら頓挫している様子。そりゃそうでしょうよ。
4%といえば、1日8時間に対してたった 19分12秒 相当の割増しですからね。一方、2006年(平成18年)の「教員勤務実態調査」によると、教員の月当たり残業時間は平均で約34時間。これまで19分ちょっとのわずかな手当で済んでいるものが、34時間分の残業代を払わなければならなくなると、確実に大幅に経費が増えます。財務省がOKするわけありません。
こんなことが民間企業で許されるのなら、経営者はこぞって採用しますね。4%低い基本給で雇用契約を結べば、人件費を桁違いに抑えることができるのですから、こんなおいしい話はありません。
ちなみに、管理職が教員に残業を命令できる場合は、次の4つだけ。
- 生徒の実習に関する業務
- 学校行事に関する業務
- 教職員会議に関する業務
- 非常災害等のやむを得ない場合の業務
つまり、ほとんどの残業は「命令されてない自主的な労働」で、要するにサービス残業。最悪のブラック企業は学校だと言われるゆえんです。
私立学校の状況はというと、公立の方針に準じて基本給の4%の割増し方式を採用している学校が多数派です。中には残業手当を支払う良心的な学校もありますが、圧倒的に少数派。
2007年(平成19年)3月29日、中央教育審議会から「今後の教員給与の在り方について」という答申が出されたものの、文科省の教員給与の見直し作業は現在、八方ふさがりの状況です。
話が進まない要因の一つとして、教員の実情があまりにも社会に知られてないことがあげられるのではないでしょうか。
教員のストレスは戦場における兵士のストレス並みとの、国際労働機関の研究結果もあります。一昔前だったら大げさでもなんでもなく、校内暴力で文字どおり生命の危険もありましたからね。
休憩時間も、生徒にとっての休憩であって、教員はのんびり休んでいられる状況にはありません。民間企業なら、休憩時間中の電話待ち待機でも労働基準法違反。労働基準監督署に発覚したら指導や罰則の対象ですよ、これ。
教育実習生が実習の合間によく言っていたものです。「教員がこんなに大変だとは思わなかった」。そのせいか、管理人在勤10年間で勤務校が迎えた教育実習生約40名のうち、教育現場で働いているのは、たったの3名です。
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